失われた従業員を補充することは、企業の士気や生産性、専門知識や技術の喪失などに影響を与えるだけでなく、年俸の150%ものコストがかかる可能性があります。しかし、適切な戦略を打つことができれば、組織内に活気や意欲が生まれ、従業員の退職を阻止できるはずです。MCIスペインが取り組んだエドワーズライフサイエンス社のSurgical Spirit というイベントが、まさしくその例です。
そこで、人材定着に取り組む際に押さえておくべき重要なポイントを考えていきたいと思います。
従業員のニーズと期待に応える
人材定着の向上のために本当に効果的な戦略を構築する際、まず重要なことが、従業員が何を望み、何を必要としているかを確実に理解することです。これらのニーズが常に満たされていなければ、必然的に従業員を失うという結果になります。
ありがたいことに、社員が何を望み、どの程度満足しているかを把握する方法はいくらでもあります。
例えば:
- 定期的なアンケートやフィードバック—回答を匿名にしておけば、従業員が職場の様々な側面について率直なフィードバックをしてくれます。この方法によって、マネジメントの有効性、職場文化、仕事への満足度といった点について把握することができます。
- 1on1ミーティング—従業員と上司の1on1ミーティングは、個人的な目標や、心配ごとを抱えている場合はそのことについて話し合う機会になります。このミーティングでは、社員がキャリア願望や自己成長の必要性について伝えることもできます。
- 退社時の面談—残念ながら、従業員が退職する結果に至った場合、退職の理由や組織内の全体的な経験について率直なフィードバックを得るのも良い方法です。
いずれの方法であっても、職場内のさまざまな感情に耳を傾けなければなりません。この洞察がなければ、優秀な人材を維持するためにどのような手段を講じるべきかわからないままです。
従業員が辞めたいと思わない会社づくり
従業員に誇りを持って働いてもらうことを目指すのであれば、ポジティブな職場風土を作ることが人材定着戦略の土台となるはずです。最良の従業員定着策は、現在のポジションを恵まれた環境だと実感してもらえるように尽力することです。ここにも、さまざまな方法があります。
従業員の評価とリワード
仕事のモチベーションは人それぞれですが、良い仕事をしたことが認められることは誰にとっても嬉しいことです。目標を達成したり上回ったりしたときに「よくやった」と言われるだけで十分な場合もありますが、次に示すような方法で、さらにもう一歩踏み込むことで、業績においても大幅な向上という成果も得ることができます。
- 優れた業績に対してボーナスを支給するなど、金銭的な報酬を提供するのも一つの方法です。年に一度のボーナス、四半期ごとのボーナス、または臨時のボーナスに関わらず、多くの人が自分を奮起させて臨時収入を得ることを、仕事における大きな魅力と感じています。
- 特別休暇やウェルネスのための休暇を付与することも、従業員には喜ばれます。休暇はほとんどの職場で貴重なものであり、このような形でより多くの休暇が提供されれば、モチベーションがさらに高まるでしょう。
- 仕事での表彰は、競争心を刺激し、良い仕事をした自分への満足感をもたらします。このような表彰は、額やトロフィー、賞状など、栄誉の証として飾れるものが良いようです。
D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)の推進
現代の職場は、D&Iを軸に、すべての従業員に公平な条件を提供しなければなりません。どのような分野においても、優秀な人材は当然、ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン(DEI)の理念が徹底している企業に集まります。実際、こうした指針を守らないという評判のある組織は、優秀な人材から敬遠される可能性が高まります。
MCI USAによるNCSEAの事例に見られるように、職場において、誰にでも公平なチャンスが与えられるような方針を策定し、実施することが非常に重要です。これには、偏りのない採用活動、昇進の均等な機会、差別やハラスメントの事例への迅速な対処などが含まれています。
コラボレーションとチームワークの奨励
チームワークが企業の成功に重要であるという考え方は今に始まったことではありません。職場においてチームワークを継続的に奨励することの必要性は、今なお大きな意味をもっています。チーム間や部署間で良好なコラボレーションが行われると、社員の結束が高まり、組織という大家族の一員であることを実感できるようになります。
定期的なランチや飲み会、旅行、エクササイズなどのチームビルディング活動は効果的です。人材定着の向上を目指す施策にはミーティングルーム、オープンエリア、共同のワークスペースなどコラボレーションを生み出しやすいようにオフィススペースをデザインすることも含まれます。チームが結束力をもって働きやすい環境であればあるほど良いと言えます。
競争力のある報酬と福利厚生を提供する
優秀な人材は、多くの場合、最も高い給与を提示する企業に惹かれるのは言うまでもありません。そのため、他社に負けない給与を提供することは優先事項の一つにあたるでしょう。自社の給与水準が適正であることを確認する最も簡単な方法は、自社の提示する給与と競合他社が同様の職務に対して支払っている給与と比較して指標とすることです。
ただし、給与は待遇の一要素に過ぎません。充実した福利厚生を提供することも同様に重要となります。つまり、包括的健康保険や退職金制度、さらにはウェルネスプログラムの提供なども検討すべきです。こうした特典を従業員は重視しており、離職率にも大きな影響が見込まれます。
キャリア形成の機会を提供する
社員がキャリアアップのために別の会社に移ったほうがいいと感じることは、最も避けたいことです。そのため、優れた人材を維持するためには、スキルの向上や仕事面での成長をサポートする様々な機会を提供することが大切です。
継続的専門能力開発(CPD)やメンターシップのような制度は、従業員のモチベーションを高め、成長させるのに非常に役立ちます。
従業員のワークライフバランスの確保
効果的な人材定着率向上のために優先すべきもう1つの側面は、従業員が良好なワークライフバランスを享受できるようにすることです。健康的で生産性が高く、意欲的な従業員を確保する鍵は、従業員に息抜きをできる余裕を与えることです。そうすることで、疲れや燃え尽き、ストレスを感じにくくなります。
どんなにひたむきな従業員にもダウンタイムは必要であり、それはウェルビーイングや全体的な仕事の満足度にも不可欠です。しっかりと休息できている人は一般的に前向きで、士気も高いといえるでしょう。このような取り組みを行うことで、組織に対する忠誠心を育むだけでなく、常習欠勤を減少させるのにも役立ちます。
そのために、以下のような施策を導入することが考えられます:
- コンプレストワークウィーク(1週間の所定労働時間は変えず、1日あたりの就業時間を長くして、その分就業日数を少なくする勤務形態)—毎日の勤務時間を延長することで、従業員は長い週末を楽しんだり、家族と充実した時間を過ごすことができます。
- リモートワークという選択肢—社外で仕事をすることがかつてないほど容易になりました。リモートワークの活用は、従業員にとって不必要な通勤のストレスから解放させる効果があります。
- フレキシブルな勤務時間—従業員には割り当てられた勤務時間がありますが、個人の希望に合わせて働く時間を決められることは、仕事への満足度と全体的な幸福感を向上させる要素となります。
柔軟な働き方を推奨し、健康バランスを取ることを促進している企業は、優秀な人材にとって非常に魅力的であり、競合他社に対して大きな優位性を持つことができます。また、既存の従業員にとっても有効で、つねに高いモチベーションと満足度で会社の掲げる目標に向かって熱心に取り組んでくれるようになります。
効果的なリーダーシップとマネジメント
従業員の定着率が最も高い企業は、その中核に、優れたリーダーがいます。最前線で働くリーダーは、エンゲージメントと忠誠心を高めながら、ポジティブな職場環境を醸成する上で極めて重要です。そのため、チーム開発、コミュニケーション、問題解決といった主要な能力を網羅したリーダーシップトレーニングを提供することが大事です。
マネジャーが透明性、率直性、誠実性をもってコミュニケーションをとることで、従業員は十分な情報を得られ、評価をされていると感じ、信頼と信用が生まれます。これはまた、従業員の希望を考慮したり、安全性や帰属意識を育むことにもつながります。
また、コンフリクトマネジメントは、人材確保に欠かせない要素です。優秀な人材が不必要に組織を去るのを防ぐためにも、チームで意見の異な相違があれば公正かつ迅速に対応すべきです。
従業員定着率向上に向けた施策で優秀な人材を維持する
これまで述べてきたように、優秀な人材を確保するためには、単に給与を高くすればいいというわけではありません。優秀な人材を確保・定着させるためには、報酬も重要な要素ですが、効果的なリーダーシップ、キャリアアップ、仕事の成果に対する評価、公平・公正な職場を提供することも重要な要素です。
MCIは、従業員エンゲージメント向上を目的とした施策作りの経験と知識を持ちあわせています。従業員が企業に対して愛着をもち、辞めたくなくなるようなポジティブな職場をつくるお手伝いをします。
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